空き家の問題とその深刻化による老後の生活資金への影響

空き家が近年ますます増加し社会問題化しています。そこで空き家が増加している理由、空き家を放置したときに生じる問題点、空き家対策の法律が制定されたことによって家計の負担が重くなる理由、および空き家が老後の生活資金に与える影響について解説します。併せて、ゆとりある老後の生活資金のためには不動産をどう活用すれば良いのかについても検討します。

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  • 空き家が増加している理由と今後の予測

5年ごとに行われる総務省の「住宅・土地統計調査」の直近の調査結果によると、2013年度の空き家数は820万戸、空き家率(総住宅数に占める空き家の割合)は13.5%と過去最高です。1963年の2.5%から右肩上がりで上昇してきています。

そして、この傾向は鈍化するどころか今後は急速に上昇していきます。野村総合研究所は、現状のまま推移すると2033年には空き家数が約2,150万戸、空き家率30.2%になると予測しています。空き家率は過去50年間で10%強の増加でしたが、今後20年間で約17%と急激に高まっていきます。2008年頃から日本の人口減少は始まっていましたが、核家族化の進展などで世帯数はまだ増加していたので緩やかな空き家率の増加でした。しかし、世帯数も2019年頃から減少に転じると予測されており、人口と世帯数の減少があいまって空き家が急激に増加していきます。

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  • 空き家を放置したときに生じる問題点

空き家が増えてきたことから、さまざまな問題が生じ近年社会問題化してきています。主な問題点として以下の4つ問題点があがっています。

1.放火による火災リスクの増大
2.老朽化による倒壊の危険
3.不法侵入などによる犯罪の温床化
4.ゴミや屋敷化や落書きなどによる景観の悪化

空き家を放置することは、近隣住民に対して大きな迷惑をかけるだけでなく、火災による延焼や老朽化による家屋や人へ損害・損傷を与えてしまう可能性もあります。また今後は、近隣住民への迷惑を与えるだけでなく、空き家の所有者への負担も大きくなっていきます。

それは、空き家問題が社会問題化したことで2015年に「空き家対策特別措置法」が施行されたからです。この法律では、「空き家への行政の立ち入り権」「行政による空き家の管理や撤去などの指導・勧告・命令」「行政による空き家の強制撤去」などを認めています。この法律に違反すると数十万円の罰金が科せられます。

また、空き家が「特定空き家」に指定されると、今まで固定資産税が6分1に優遇されていた特例が適用されなくなります。そのため、固定資産税額が今までよりも4.2倍に跳ね上がります(6倍にならないのは更地の場合、固定資産税の評価額が30%減額されるためです)。また、空き家が危険と判断されると行政によって強制撤去されますが、その撤去費用が請求されます。

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  • 老後生活資金に空き家問題が与える影響

総務省の「家計調査年報(家計収支編)平成27年(2015年)」によると高齢者の毎月の生活は赤字を示しています。

・高齢夫婦無職世帯(夫65歳以上,妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の場合
2015年度の家計収支は62,326円(実収入213,379円、消費275,705円)の赤字です。
・高齢単身無職世帯(60歳以上の単身無職世帯)の場合
2015年度の家計収支は41,195円(実収入115,179円、消費156,374円)の赤字です。

この毎月の赤字は退職金や預貯金、およびその資産を取り崩しによって埋めていかねばなりません。2016年度の日本人の平均寿命は、厚生労働省の調査によると男性が80.8歳、女性が87.1歳でともに過去最高とまだまだ長寿命化の傾向を示しています。ゆとりある老後の生活を送るには15年から25年間、毎月約4万円から6万円強の赤字を埋められる資金が必要です。

一般的には多くの高齢者は不動産以外の資産を取り崩すか、もしくは毎月の支出を減らすことでやりくりをしたいと考えています。しかし、高齢になって病気やケガで体の自由がきかなくなって高齢者のための施設への入所を検討しなければならない。あるいは住んでいる住宅以外に不動産を所有しているので、資金が不足すればその不動産を売却して資金をやりくりしなければならない。このような状況になると、売却したい不動産価格に空き家問題が大きく影響してくることが考えられます。

空き家問題は、地域ごとの問題の大きさにバラツキがあります。また、空き家を活用する政策などによって、一気に不動産価格が下がるということにならないかもしれません。しかし、今後は不動産価格が大きく下がるかもしれないというリスクを十分考慮して老後の資金計画を検討する必要があります。

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  • ゆとりある老後生活資金のための不動産の処分または活用

預貯金など不動産以外の資産で老後の生活をゆとりを持って生活できれば空き家問題は考慮する必要はありません。しかし、毎日の生活が高齢者2人、あるいは1人だけでは難しくなって、やむを得ず施設への入所するため不動産の売却検討しなければなくなる可能性があります。また、不動産を売却して老後の資金をやりくりしなければならない場合もあります。

不動産を売却しなければならない場合は、空き家問題が深刻化することから地域によっては早めの処分を検討するなどの対策が必要です。また、不動産を売却すると住む家がなくなるという場合は、自宅を担保として融資を受け死亡時に自宅を売却して一括返済できるリバースモゲージの活用などが考えられます。いずれも不動産価格が大きく低下する前に行うことが必要です。

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  • まとめ

空き家が増加している理由、空き家を放置したときに生じる問題点や空き家を所有し続けることのデメリット、空き家が老後の生活資金に与える影響、および不動産を老後の生活資金とし利用する場合の方法・注意点について解説しました。空き家問題は、老後の生活資金に大きな影響を与える可能性があるので注意が必要です。