認知症の症状が進むと暴力や暴言といった問題行動があらわれることがあります。人が変わったように怒りっぽくなったり、「物を盗られた」などといった妄想が激しくなったり、介護を暴れて嫌がったりします。周りの家族は心身ともに疲れ果ててしまい、大きなストレスを抱えてしまうことでしょう。でも、これは認知症という病気のせいです。病気の特徴を正しく理解して対処すれば、介護する側もされる側も負担が軽くなるはずです。

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  • 原因は?

認知症は、脳の細胞が壊れる病気です。そして脳は理性や感情もコントロールしています。例えば頭の前側にある「前頭葉」はものを考え、理性的な行動ができるように計画を立てる機能を持っています。認知症になるとこの前頭葉が萎縮してしまい、その役割を果たせなくなってしまいます(前頭側頭型認知症)。また、レビー小体型認知症というタイプでは、脳細胞の中にレビー小体と呼ばれる特殊なたんぱく質が溜まります。そして脳皮質や脳幹の神経細胞が壊されてしまいます。その結果神経が上手く伝わらなくなり幻覚などが見えるようになり、暴言や暴力につながります。

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  • 症状は?

怒ることは誰にでもあります。ただし一般の人は少しくらいの嫌なことがあってもその感情を抑えられるものです。しかし認知症の人の場合、この抑えが利かなくなって感情がすぐ表に出てしまいます。怒りのポイントが健常だった頃と違っており、ちょっとしたところでスイッチが入ってしまうようになります。不安やいらだちも大きくなります。いろいろなことが理解しにくくなっているため、余計に恐怖や不安などの気持ちが増幅されてしまうのです。そこで介護者から怒られたり自分を否定されたりすると、自分を守るためにとっさに暴力が出てしまう場合もあります。

認知症の人が暴力を振るう相手は、日ごろフォローを受けている介護者であることが多いようです。男性であれば奥さんが暴力の対象になってしまいがちです。一番感情を出しやすい人に対象を向けているということです。ただし、認知症の人であっても何でもかんでも暴力に訴えるようになるというわけではありません。行動の全てに理由があるのです。例えば、「物が盗まれた」という妄想は認知症の人によく見られる症状です。そこで周りの家族が「誰も盗ってないよ」と言ってしまうと、「自分は嘘を言っていると思われている」と感じて怒りのスイッチが入ってしまいます。そこで家族がヒートアップして「ボケている」などと言ってしまうと状況はさらに悪くなります。自尊心を傷つけられることで、さらに暴言や暴力に頼るようになります。また、椅子やベッドに移動する時声かけなしで介護者が体を触ってしまうと、「何か悪いことをされてしまいそうだ」という感情が先に出てしまいとっさに暴力が出てしまいます。

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  • 対処法は

暴力を振るったり暴言を吐いたりする人への対処法は、非常に難しいものです。まずは「こういう病気だ」と理解することです。そして常に冷静に、決して感情的にならないことです。暴力や暴言に対して感情的な対応をすると、認知症の人は「否定された」「危険だ」と感じてしまい、さらなる悪循環に陥ってしまいます。しかし毎日耐え続けるというのも賢明ではありません。介護者を変わってもらう、というのも有効な対策です。暴力や暴言は一番身近で良く接している家族などの介護者に出る場合が多いためです。そのような時はヘルパーに来てもらうとお互いに楽になります。また、体調が悪くないかチェックするということも重要です。暴力が体調不良から来ている場合もあるためです。発熱していて頭が痛かったり、便秘でお腹が苦しかったりしてイライラが募り、暴力へつながってしまう例もあります。心と体は密接に関わっています。体調管理には十分気を配りましょう。

地域の介護支援専門員(ケアマネジャー)にも、気軽に相談してください。家族など少人数だけで抱え込んでしまうのが、介護する側のウツや虐待など一番不幸な結果を招きます。症状がひどくなってしまった場合には、専門医へ相談することをおすすめします。認知症の主治医に相談の上、別の医者に診てもらう可能性もあるでしょう。精神科や心療内科で診察を受けて服薬治療をすることで良くなることがあります。また、病院の中には、認知症療養病棟を設けているところもあります。

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  • おさらい

認知症患者の中には、暴言や暴力といった症状が出る人がいます。温厚だった人が怒りっぽくなったり、何気ない一言に手を上げるようになったり、家族は戸惑ってしまうでしょう。しかしそれは脳が壊れてしまうという認知症の病気ゆえです。「病気のせいだ」と冷静に構え、決して感情的にならずに対応することが求められます。感情的になることは患者の不安や恐怖を増大させ、症状の悪化をまねきます。介護する側はヘルパーやケアマネージャー、医師らの助けを借りながら、ストレスを溜めることなく対応していくことが大切です。