- 幻覚
認知症患者の中には幻覚を訴える人が多く見られます。幻覚とは、実際にないものに対し、あるように知覚することです。例えば、亡くなられたはずの親戚が見え、誰もいない部屋で話しかけているなどの言動のように、実際にないものが見える「幻視」は、レビー小体型認知症の方に多くみられる幻覚の症状のひとつです。しかし幻覚は、視覚によるものだけでなく、五感すべてにみられ、「幻視」「幻聴」「幻触」「幻臭」「幻味」などに分けられます。
また、レビー小体型認知症の方は「錯視」の訴えも多く、例えば壁紙の模様が虫に見えたり、ふとんカバーのシワを見て「蛇がいる」と思い込んだりすることがあります。「錯視」とは、実際にあるものを別の違うものと見間違えることをいい、「幻覚」と「錯覚」の違いは、感覚機能が正常であるか否か、知覚する対象の有無によって分けられます。
- 幻聴
幻聴は幻視に比べると、認知症患者の症例は少ないようです。しかし幻視と同じく、レビー小体型認知症においてはそこまで珍しい症状ではありません。「周りに人がいないのに声が聞こえてくる」というのが代表的な症状です。レビー小体型認知症はアルツハイマー型認知症のような記憶障害がほとんどない代わりに、幻視や幻聴といった幻覚があらわれるのが特徴です。
幻聴が聞こえている人は何かにとりつかれたように見え、周囲の人は戸惑ってしまうでしょう。しかしあくまで認知症の症状のひとつです。「病気のせい」だとしっかり理解して冷静に対応することが肝要です。その中で一番大切なのは、「相手を否定しない」ということです。どんなに現実離れしている内容でも、本人は実際に感じているのです。まずは訴えを受け止めて相手を落ち着かせることから始めましょう。話を合わせることも時には必要です。「虫がたくさんいる」と訴えられたら「今、薬をまいたからすぐにいなくなりますよ」と答えたり、実際に消臭スプレーなどをまいてみたりするのも有効です。
- せん妄
もうひとつ、認知症の症状として「せん妄」があります。せん妄とは意識障害が起こり、頭が混乱した状態になっていることです。病気ではなく、ある異常な精神状態を指すものです。医学用語としての具体的な定義がありますが、さまざまなタイプの混乱状態を総称する言葉として一般的に使用されています。広義には幻視や幻聴などの幻覚もせん妄に入ります。脳の機能が低下し、上手く神経を伝えられなくなることで起こります。他にも突如興奮状態となって大声を出したり、暴力をふるったりすることがあります。せん妄自体は70歳以上の入院患者では15~50%の人に発生するとされている、誰の周りにも起こりうる症状です。認知症の症状にせん妄はありますが、「せん妄=認知症」ではない、ということは覚えておきましょう。
- せん妄の原因
せん妄は、脱水や酷い便秘などの体調不良が原因となることがあります。他にも引っ越しや介護施設への入所、入院などの環境変化でも要因になります。例えば入院により普段使っていた眼鏡や補聴器が使用できないといった事象も、引き金になります。さらに飲んでいる薬の副作用ということもあります。パーキンソン病の薬や抗うつ薬・抗精神薬などが代表的です。手術直後に発生することも多いようです。つまりストレスの多い生活環境だと起こりやすくなるということです。
- 対処法は
せん妄は突然発生して変動する精神機能の障害で、適切に対処すれば回復が可能です。ただし迅速な医学的管理が必要です。原因を特定して迅速に処置できるかがカギを握ります。まずは専門の医療機関を受診しましょう。病院では家族に「いつ頃症状が発生したか」「どのくらいのスピードで進行したか」「薬の服用歴」などを問診して、せん妄かどうかの診断や原因の特定が行われます。血液や尿検査、CT検査、MRI検査などで原因が特定できれば、生活習慣の改善と服薬での治療が可能になります。
周囲の人ができることとしては、「感情的にならず冷静に対応する」「相手を受け入れる」ということがあげられます。見当違いのことを言われても怒ったり否定したりするのではなく話を合わせながら聞いてあげてください。暴力が出ている時は離れて様子を見る、ということも必要です。
- 予防法は
せん妄にはストレスが大きく関わっているということが分かっています。水分補給や空調の管理など、健康状態には気を配りましょう。睡眠不足もストレスになりますので、引っ越しや入院があってもできるだけ同じ環境になるようにするという気配りも必要です。場所が変わっても枕などの寝具はそのまま使う、といったことです。昼夜逆転も大敵ですので、できるだけ日中に起きている時間を増やすよう努力しましょう。日光が部屋に入るようにする、日中にたくさん話しかける、などが有効です。
- おさらい
認知症の症状のひとつに「せん妄」があります。意識障害が起こり頭が混乱した状態になっていることで、これ自体は高齢者にとっては珍しいことではありません。突然大声を出したり暴力を振るったりすることのほか、幻視や幻聴といった幻覚もこれに当てはまります。周囲のサポートとして求められることは、相手を否定せず冷静に対応することです。例え現実離れしていることを「見た」「聞いた」と言っていても本人には本当に見え、聞こえているのです。せん妄自体は適切な治療を受ければ症状を改善させることができます。「認知症だ!」と悲観せず、早めに専門医を受診しましょう。
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