認知症は、脳の障害によって日常生活や社会生活を営めなくなってしまう状態のことです。その認知症によるさまざまな障害で、自分がいる場所や時間がわからなくなり、それにともなって不安やストレスが重なると、「徘徊」という行動につながる場合があります。

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  • 認知症による徘徊とは

認知症による徘徊とは、認知症による「見当識障害」や短期的な「記憶障害」などが進行し、不安やあせり、落ち着かないなどの「心理的な要因」が重なって、ウロウロと歩き回り元の場所に戻れなくなる、目的の場所にいけなくなるといった状態のことです。

認知症の症状は2つに分類されており、脳の神経細胞が壊れることで生じる「中核症状(基本症状)」と、それに性格・環境・心理状態などの要因が加わって生じる「周辺症状(行動障害、精神症状)」があります。

「認知症による徘徊」は、その周辺症状に含まれます。周辺症状はBPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)とも呼ばれています。

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  • 認知症による徘徊の症状

本人なりの目的や理由があってウロウロと歩きまる、ブラブラとあてもなく彷徨う、同じ所を何度も行ったり来たりするといった症状が見られます。

具体的には、何か物事を調べてまわったり、探し物をしたり、人の後について行ったり、自分の家ではないように感じて昼夜を問わず外出しようとしたり、仕事をしていると思い込んで出勤しようとしたりします。また、買い物に出て自宅に帰れなくなることや、自宅でトイレの場所や自分の部屋がわからなくなる場合もあります。

1人で外を徘徊してしまうと、自力で目的の場所にたどり着くことができない場合が多いため、脱水症状や転倒などのアクシデントが起こることがあり、非常に危険です。

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  • 認知症による徘徊の原因

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認知症による徘徊の原因として考えられるのは、中核症状である「見当識障害」・短期的な「記憶障害」・「判断力の障害」に、不安やあせりなど「心理的な要因」が重なることです。

見当識障害」とは、今日は何年の何月何日か、いま何時か、ここはどこか、いまの季節は何かといった、いま自分がどのような状況に置かれているのか分からなくなってしまう症状のことです。また、「この人は誰?」と周囲にいる人々のことも分からなくなってしまいます。そのため、自分の家ではないような気になるのです。

短期的な「記憶障害」は、物忘れとは違い、経験したことそのものを忘れてしまいます。”忘れた”という自覚がないため、いくらヒントを与えても思い出せません。脳の海馬が正常に動かないので、少し前の自分の行動や聞いたことなど新しいことを覚えられなくなり、一日の中で何度も同じことを聞く、水の出しっぱなしや火のつけっぱなし、置き場所を忘れるなどの症状が起こります。

「判断力の障害」とは、物事を理解したり適切な判断をしたりすることができなくなることです。そのため、赤信号でも道路を横断してしまったり、線路の中に入ってしまったりすることがあります。道に迷っても、人に道を聞くといった判断もできなくなります。

そして、そのような中核症状の進行のせいで、不安やあせり、落ち着かないなど「心理的な要因」が重なり、そのストレスが徘徊につながると考えられています。

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  • 認知症による徘徊への対処法
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認知症による徘徊症状が見られたら、徘徊を減らすことよりも不安を緩和することが大切です。徘徊には、何かしら理由があります。

ご家族が心配なお気持ちで、「危ないから歩きまわっちゃダメだよ」といいたくなるのも仕方がありません。しかし、必要なのは徘徊を無理に止めることではなく、徘徊の理由を確認することです。そして、徘徊の理由に応じて原因を解決することが重要です。

なぜその場所に行こうとするのか、なぜ歩きまわっているのかを本人に聴いたら、その理由を否定せずに、安心できるような言葉をかけてあげると落ち着く場合があります。たとえば「今日はもう遅いから、明日の朝行ってみましょうか」など。とても近い場所で可能ならば、介護をする方がご本人の望む場所まで付き添うのもよいでしょう。ご自宅を徘徊している場合は、トイレやお部屋に戻ろうとしているけれど、分からなくなってしまっている場合が多いので、やさしく声をかけてみてください。

不安や焦りがないか、安堵しているかどうか表情を確認しながら、ご本人の気持ちに寄り添い、心理的な不安や恐怖を緩和することで、少しずつ徘徊が少なくなっていくはずです。

心理的な不安が原因ではない場合も稀にありますが、その場合でも同様に、歩きまわる理由を確認しながら、見守ることが必要となります。なお、万が一、認知症の方が長い時間外に出て戻らない場合は、事故などの危険もあるので、すぐに通報しましょう。

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  • 認知症による徘徊への対策

もしも、外を徘徊してしまうことが多い認知症の高齢者を介護されている場合は、あらかじめ近所の方にお知らせしておくことも必要です。近所のお店や交番、民生委員の方などにもお願いし、もしも見かけたら、ご家族に連絡が届くようにしましょう。

また、各自治体では、識別番号により、地域包括支援センターや警察署・消防署が素早く身元を確認できる「高齢者見守りキーホルダー」や「高齢者見守りステッカー」などの登録を行っています。そのほか、GPS位置情報専用端末機をつかった「徘徊高齢者探索システム」などもあるので、お住まいの自治体にお問い合わせください。

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  • おしまいに

厚生労働省から平成24(2012)年6月18日に、『今後の認知症施策の方向性について』が出されました。そのなかには、「徘徊や大声を出すなどの症状だけに目を向けるのではなく、認知症を正しく理解し、よりよいケアと医療が提供できるよう努めなければならない」と述べられています。

ついつい徘徊という行動自体を問題視し、身を案じて行動を抑制してしまいがちですが、この対処では根本的な徘徊の解消にはならないといいます。そのため、介護される方は徘徊の理由となっていることを理解し、ご本人の気持ちを考えることが必要だとされています。

とはいえ、徘徊の症状がある認知症の高齢者を介護する方のご苦労は、並大抵のことではありません。決してご家族だけで悩まずに、ぜひ地域包括支援センターや市区町村窓口にご相談ください。

また、家庭に近い環境で共同生活を送れる民間の施設「グループホーム」に入所するという選択肢もあります。老人ホーム紹介事業者などにご相談してみましょう。グループホームに限らず、認知症の方でも入所できる有料老人ホームなどの施設情報も得られるはずです。

なお、認知症のご本人とご家族が、地域住民の方や、介護・福祉・医療の専門家と身近な場所で集い交流できる場「認知症カフェ」や、娘という立場で介護をする方が集まる「娘サロン」、息子という立場で介護をする「息子サロン」、独身者が集まる「シングル介護者交流会」、「男性介護者の会」といった場も各地に広がっています。そういった場に足を運んで情報交換しつつ、専門家にもいろいろと相談してみましょう。

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  • おさらい

認知症による徘徊とは、認知症による「見当識障害」や短期的な「記憶障害」などが進行し、不安やあせり、落ち着かないなどの「心理的な要因」が重なってウロウロと歩き回り、元の場所に戻れなくなる、目的の場所にいけなくなるといった状態のことです。

本人なりの目的や理由があってウロウロと歩きまる、ブラブラとあてもなく彷徨う、同じ所を何度も行ったり来たりするといった症状が見られます。

認知症による徘徊症状が見られたら、徘徊を減らすことよりも不安を緩和することが大切です。ご本人の気持ちに寄り添い、心理的な不安や恐怖を緩和することで、少しずつ徘徊が少なくなっていくはずです。
あらかじめ近所の方やお店、交番、民生委員の方などにお知らせしておき、もしも徘徊している姿を見かけたら、ご家族に連絡が届くようにしましょう。

各自治体では、識別番号により、地域包括支援センターや警察署・消防署が素早く身元を確認できる「高齢者見守りキーホルダー」や「高齢者見守りステッカー」などの登録を行っています。そのほか、GPS位置情報専用端末機をつかった「徘徊高齢者探索システム」などもあります。

■問い合わせ窓口:地域包括支援センター、市区町村役所、各施設、老人ホーム紹介事業者
■医療機関:神経内科、精神科、脳神経外科、認知症外来

(参考文献)
認知症がある方の老人ホーム選び【有料老人ホーム情報館】
https://www.roujin-homes.jp/hajimete/erabikata/

認知症介護情報ネットワーク(DCnet)>研究報告書>報告書詳細
https://www.dcnet.gr.jp/support/research/center/detail.html?CENTER_REPORT=228

認知症の中核症状と行動・心理症状(BPSD-周辺症状) 認知症ねっと
https://info.ninchisho.net/symptom/s10

認知症による徘徊の原因と対応 認知症ねっと
https://info.ninchisho.net/symptom/s50
高齢者見守りキーホルダー 板橋区
http://www.city.itabashi.tokyo.jp/c_kurashi/079/079276.html