高齢になれば、病気やケガが多くなるのは当然のこと。超高齢社会となった日本では、高齢者施設と医療機関とのスムーズな連携が、ますます強く求められるようになりました。

しかし、老人ホームはあくまでも生活の場であり、治療を目的とした病院とは異なります。自宅で暮らしていた高齢者が病気やケガで入院した場合、退院後は医療依存度が高くなる可能性が高いので、老人ホーム選びがとても難しくなるでしょう。

老人ホームにおける医療面での受入れ体制を、よく理解しておくことが大切です。

1.老人ホームの医療受け入れ体制

【医療スタッフの配置義務】

施設の種類 医師 看護スタッフ 医療体制の充実度
老人保健施設
特別養護老人ホーム 有(非常勤可) 施設により異なる
有料老人ホーム なし(協力) 施設により異なる
グループホーム なし なし

介護老人保健施設(老健)や特別養護老人ホーム(特養)といった公的な施設の場合、医師と看護スタッフの常駐あるいは非常勤が義務づけられています。

介護付有料老人ホームにも看護スタッフが配置されており、健康・服薬の管理、緊急時における医療機関への連絡、医療サポートなどを行っています。

しかし、老人ホームで提供される医療行為は、外部医療機関によるものなので、行える医療行為は制限されています。老人ホームの看護スタッフが、医師の許可を得たうえで行える医療行為は以下のとおり。

  • インシュリン注射
  • 褥瘡(床ずれ)の処置
  • たんの吸引
  • 中心静脈栄養
  • 胃ろうなどの経管栄養
  • 在宅酸素
  • 人工呼吸器の管理

看護スタッフがいない場合は介護職員が代行します。介護職員が行える医療行為は以下のとおり。

  • 体温測定
  • 血圧測定
  • 消毒、絆創膏の貼り付け等
  • 軟膏の塗布
  • 湿布の貼付
  • 点眼
  • 服薬介助
  • 座薬の挿入
  • 鼻腔粘膜への薬剤噴射の介助

ただし、「認定特定行為業務従事者」の認定を受けた介護福祉士であれば、胃ろうなどの経管栄養や、たんの吸引を行うことができます。とはいえ、現段階で対応している施設はごくわずかです。

2.医療依存度が高い方の老人ホーム選びやポイント

そうしたことから、医療依存度が高い方(在宅医療)の場合、身体の状態に応じ、以下のポイントを抑えて老人ホーム選びをするといいでしょう。

  • 医師・常勤の看護スタッフによる健康管理体制がある
  • 看護スタッフが24時間常駐している
  • 医療機関とより関係を強化した連携がとれているか
  • クリニックが併設されている
  • 医療機関との送迎サービスがある
  • 経管栄養(胃ろう)や、たんの吸引の資格をもった介護士がいる
  • 看取りの対応が可能である
3.身体状況別老人ホーム選び注意点

【末期がん】
痛みを抑える医療用麻薬を使用することが多いため、24時間看護体制の老人ホームが望ましい。または、健康管理室に看護スタッフが滞在している施設。双方あればなお理想的。

【気管切開/胃ろう・腸ろうなどの経管栄養】
たんの吸引が必要なので、24時間看護体制の老人ホームが最適。もしくは、その資格をもった介護士がいる施設。後者の場合、看護スタッフが滞在する健康管理室を備えていることが望ましい。

【重度の床ずれ】
壊死部分の処置を定期的に行う必要がある場合は、看護スタッフが滞在する健康管理室を備えた老人ホームが望ましい。なおかつ、看護スタッフが床ずれの対応に慣れていること。

【インスリン注射】
24時間体制で看護スタッフが常勤しているか、インスリン注射が必要な食事時間帯に看護スタッフが勤務している老人ホーム。

【在宅酸素、胃切除、栄養制限】
在宅酸素の受け入れ実績がある施設だと安心。胃切除の場合は分食対応が可能か、栄養制限がある場合は、禁止成分の対応は可能か確認しておく。

【人工透析】
透析クリニックへの送迎手段があるかどうか(定期運行バスや施設での送迎)、透析病院との連携があり、急変時には入院可能であること、塩分や水分などに万全の注意を払っており、本人に合った食事内容であるかなど確認しておく。

【中心静脈栄養(IVH)】
病院との医療提携が万全か、往診医がIVHを取り扱うことができるか、看護スタッフがIVHの対応に慣れているかなどを確認。

4.その他の身体状況別老人ホーム選び注意点

常時の点滴が必要な場合は、24時間看護体制の老人ホームが最適です。もしくは往診医が点滴に同意している、訪問看護ステーションと連携がある施設もおすすめです。
但し、認知症の方の受け入れ先はごくわずかです。

しかし、人工呼吸器が必要な方を受け入れている施設はごくわずかです。その理由は、非常時に人工呼吸器の電源を確保できないなどの問題があるからです。

また、皮膚疾患の疥癬を患っている方の場合は、一般的に受け入れが不可となっています。完治すれば入居が可能となります。

脳梗塞などによるマヒがある場合、C型肝炎などの感染症や、パーキンソン病、骨折の場合は、問題なく入居できるでしょう。

5.医療機関との連携

厚生労働省が平成30年4月2日付けで改正した、有料老人ホームの「設置運営標準指導指針」には、“入居者の病状の急変等に備えるため、あらかじめ、医療機関と協力する旨及びその協力内容を取り決めておくこと”とあります。

そのため、有料老人ホームでは、協力医療機関が看護スタッフを通じ、定期健診、健康相談、健康面のアドバイス、諸々の医療行為を行いますが、その内容や充実度は施設によって異なります。

医療機関との関係をより強化した契約を結んでいる施設、建物内あるいは敷地内・近場にクリニックを併設している施設、対応が迅速な施設など、さまざまな特徴があります。

6.緊急時の対応

救急対応可能な医療機関や、必要なとき優先的に入院できる医療機関と協力関係がある老人ホームは、緊急時の対応が充実しています。

また、老人ホームにクリニックが併設されている場合、医療機関への移動距離が少ないという利点があります。老人ホームと併設されているクリニックが、同一の法人によって運営されていると、情報共有・連携がよりスムーズです。

もちろん、緊急時の対応については、夜間におけるスタッフの勤務体制も大きな指標となるでしょう。

7.おしまいに

たとえ、現時点で医療依存度が高くなくても、その後の生活を見据え、長く幸せに暮らせる老人ホームを選ぶことが大切です。老人ホームの医療受け入れ体制をよく理解し、最適な老人ホーム選びをしてください。

(参考)
有料老人ホームの設置運営標準指導指針について |厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000084815.pdf

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