長期にわたって口から食事がとれない、消化管が機能していない、体力低下を防がなければならないといった場合、血管内に直接点滴して栄養を補給するIVH(中心静脈栄養)が必要です。IVHを必要とする方が、老人ホームに入居する場合のポイントやリスクなどを説明します。
1.IVH(中心静脈栄養)を必要とする疾患一覧
IVH(Intravenous Hyperalimentation・中心静脈栄養)とは、からだの中心近くの太い血管、中心静脈から高カロリー輸液(1日のほとんどの栄養分:糖質・アミノ酸・脂質・電解質・微量元素・ビタミン)を継続的に投与する方法です。国際的には、IVHよりもTPN(Total Parenteral Nutrition)という言葉が用いられています。
IVHを必要とする疾患、必要となる可能性を含む疾患は、次のとおりになります。
疾患名 | 主な状態 |
---|---|
炎症性腸疾患 | 自分の免疫細胞が腸の細胞を攻撃する。潰瘍性大腸炎、クローン病など |
小腸閉塞 | 腸管内容物が腸管内に停滞する |
慢性腎不全 | 腎機能が低下し、回復不可能な状態 |
消化器がん | 食道・胃・大腸や、肝臓・膵臓・胆道などのがん |
摂食・嚥下障害 | 食べ物の咀嚼・飲み込みに障害がある |
脳血管障害 | 脳梗塞、脳出血、くも膜下出血などの後遺症 |
パーキンソン病 | 脳内の神経伝達物質が不足し、運動障害などが進行 |
筋萎縮性側索硬化症(ALS) | 筋肉の萎縮や筋力低下をきたす |
※ほか、大きな手術前後、集中的に化学療法を受けている場合など。
2.IVH(中心静脈栄養)の方の老人ホーム選びのポイント
IVHにおける高カロリー輸液のセットは老人ホームの看護スタッフが行いますが、点滴の針やカテーテルの交換は往診医が行います。ホームの往診医が、IVHに熟練しているほど安心です。入居の際にはよく確認しましょう。
また、看護師が24時間常駐していること、訪問看護ステーションとの連携が万全であること、看護スタッフがIVHの対応に慣れていること、ホーム自体がIVHの受け入れ実績があることも、大きなポイントです。
長い時間、からだに管がつながっているというストレスが多い状態なので、植物を眺めたり、外気を浴びたりできるよう、気分転換への配慮を細やかに行う老人ホームが理想的です。
3.IVH(中心静脈栄養)の方の入居条件
皮膚の下にCVポート(点滴の注入口)が入っていることが、IVH(中心静脈栄養)を必要とする方に対する、一般的な入居条件です。
しかし、管理が大変であることから、IVHの方を受け入れている老人ホームはあまり多くありません。逆をいえば、IVHが必要な方を受け入れている老人ホームは、医療受け入れ体制が整っている施設であるともいえます。
4.入居上のリスク
IVH(中心静脈栄養)は感染症や合併症のリスクが高く、低血糖や高血糖、高脂血症になる可能性もあるので、点滴の挿入や、栄養剤の管理、時間の管理、状態の観察など、あらゆる部分で細心の注意が必要になります。そのため、医療対応が可能だとしても、看護スタッフが不足している場合、入居を断られてしまうケースがあります。
また、敗血症や血栓などが発生した場合、投薬、カテーテルの引きぬきなどを行い経過を観察しますが、著しく体調が変化し、対応が困難と判断されると、ご家族と相談のうえ、医療機関や自宅などの希望の場所へ退所を求められることがあります。
5.おしまいに
IVH(中心静脈栄養)には感染症や合併症のリスクがあり、管理がとても大変なことから、受け入れ可能な老人ホームはあまり多くありません。最初から絞り込んでしまわず、エリアを広げて老人ホーム探しをすることをおすすめします。
また、入居者の方の生活が心地よいものになるよう、医療受け入れ体制が万全というだけではなく、精神的な部分へのケアが整っている施設であることにも注目すべきでしょう。
(参考)
ワムネット
http://www.wam.go.jp/content/wamnet/pcpub/kaigo/caremanager/
caremanagerworkguide/diseaselist.html
IVHとCV、TPNの違いがわからないので知りたい|ハテナース
https://kango-oshigoto.jp/hatenurse/article/1143/
中心静脈栄養(TPN) | 輸液と栄養 | 大塚製薬工場
https://www.otsukakj.jp/healthcare/iv/tpn/
中心静脈栄養(IVH)について | 医療法人明医研
http://meiiken.or.jp/ivh
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