自分の家は心落ちつく安心できる場所。しかし、年齢を重ね足腰が弱くなっている高齢者にとっては、どんなに住み慣れた場所でもヒヤリとしたり、ハッとしたりすることがあり、危険がいっぱいです。わたしたちが何気なく過ごしている「家」で起こりがちな高齢者の事故と、注意点、工夫できることをまとめました。

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  • 高齢者が起こしやすい事故
転倒事故の例 イメージ
<転倒事故の例>
住み慣れた家、着慣れた衣服やパジャマでも、油断していると以下のようなことが起こり、足をくじいたり、家具や電化製品の角などにぶつかって怪我をしたりと、思わぬ事故につながってしまいます。
・端がめくれたカーペットに引っかかり転倒
・玄関マットなど、小さな敷物につまずいたり、滑ったりする
・電気カーペットや暖房機器などの電気コードに足を引っかけて転倒
・ズボンの裾が、家具や階段などで引っかかり転倒
・家の中の段差に足が引っかかりつまずく
・こたつ布団、あるいは夜トイレから戻ったとき布団に足をとられて転ぶ
・夜トイレに起きたとき、パジャマやガウンなどの裾を踏んで転ぶ
・階段の最後の一段を踏み外して転倒
・靴下が滑り、階段を滑り落ちてしまう
・玄関でサンダルが脱げきれず転倒
・立ったままズボンを穿こうとした際、バランスを崩して転倒
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<転倒事故を起こさないための工夫>
自宅は気を緩められる場所だからこそ、思わぬ危険があります。でも、しっかりと注意・工夫することで事故を防いでいくことが可能です。
・できるだけ床には物を置かない
・敷物は、できるだけ部分的なものを避け、部屋の端まで敷きつめる
・カーペットのズレやめくれを防ぐカーペットテープを使用する
・電気コードは端に寄せたり、家具の後ろにまわしたりなどして、歩く範囲にはわせない
・玄関や台所などに敷く小さなマットには、滑り止めシートを敷く
・可能な限り、家の中にある段差をスロープ化する
・階段や廊下の段差に、蛍光テープを貼り見えやすくする
・安全に生活するための「動線(歩く経路)」を決めておく
・長すぎるズボンやスカートを穿かない
・ズボンなどのウェストがゆるんでいないかチェック(裾を引きずらないため)
・部屋履きは”かかと”のあるものを、靴下も滑り止めがついたものを履く
・ズボンや靴下、タイツなどを履くときは、必ず椅子に腰かけて行う
・玄関に椅子を置き、靴の脱ぎ履きは椅子に座って行う
・高齢者が生活するうえで必要なものは1階に置いておく
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<エアコンや暖房機器に関する事故の例>
季節に応じて欠かせないエアコンや暖房機器ですが、高齢者の方はうっかり間違った使い方をしてしまうことがあり、それが火事や熱中症など、大きな事故につながってしまう場合があります。
・電気ストーブに毛布をかけ、こたつ代わりにして毛布が燃える
・ストーブの前で横になっていたら、衣服が焦げていた
・ストーブをつけたまま外出してしまう
・冷房と暖房のスイッチを間違えて、真夏なのに暖房をつけ熱中症に
・真夏にエアコンが故障していても、暑さやのどの渇きに気づかず熱中症に
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<エアコンや暖房機器に関する事故を起こさないための工夫>
うっかり間違いに加え、高齢者の方はエアコンの電気料金が高いと考え使用を躊躇しがちです。そういったことなども踏まえ、高齢者の方ご自身や、ご家族によるちょっとした工夫で事故を防いでいけます。
・電気ストーブなどのまわりに燃えやすいものを置かない
・消し忘れを防ぐため、自動でOFFになるストーブに交換
・部屋に室温時計を置いて、体感できなくても常に目で確認できるようにする
・熱い季節のときは冷水が入ったポットを常備し、少しずつ飲む習慣をつける
・最近のエアコンは、それほど電気量がかからないと説明し、理解してもらう
・季節に応じて、エアコンのリモコン操作を特定する※
※夏は冷房、冬は暖房のON/OFFしか押せないよう他のボタンを覆い隠す
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<調理中の事故例>
料理は脳の前頭葉を使う知的な活動だといわれています。そのため、高齢者の方がお料理をして、食事を楽しむことは健康寿命を延ばすためにも非常に有効です。しかし、調理は火や熱を使う場合が多いため、着衣着火などが起こりやすく注意も必要なのです。
・料理中、コンロに近づきすぎて化学繊維のエプロンが溶けた
・料理中、エプロンの前のリボン結びに火がつきそうになった
・コンロの奥に手を伸ばそうとしたら、衣服に火がつき火傷
・袖口のボタンが外れたまま、お湯を沸かそうと火をつけたら袖口に火がつき火傷
・IHクッキングヒーターを使用しているのを忘れ、鍋をかけたまま外出し鍋を焦がした
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<調理中の事故を起こさないための工夫>
安全に料理を楽しみ、健康な生活を送るために、次の注意や工夫をしていきましょう。
・ガスコンロの使用時は、燃えやすい生地の服や、毛足が長いセーターは避ける
・袖の長い服は避けるか、必ず袖をまくってから火を使う
・調理するときは、裾や袖が広がった服を着ない
・調理の際は、首元のスカーフ、マフラー、ストールを外す
・火をつけたら同時にキッチンタイマーもつけ、消し忘れをなくす
・火を使ってお湯を沸かさずに済むよう、電気ケトルにする
・ガステーブルのまわりは整理整頓し、その奥に物を置かない
・鍋などから火がはみ出さないよう、火力を調節する習慣をつける
・火がつきにくい防火エプロンやアームを使用する
※なお、金属製湯たんぽの過熱は危険な場合があるので、必ず使用方法をご確認ください。
※仏壇でろうそくを使っている場合、着衣着火が起こらないよう注意しましょう。火を使わない蝋燭やお線香セットなどもあります。
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<入浴中の事故例>
東京ガスによれば、入浴中の急死は、なんと交通事故死亡者数の4倍以上にものぼるとのこと。その理由は、急激な温度変化で起こるヒートショックのせいです。
ヒートショックのメカニズムは、暖かい部屋から寒い脱衣所や浴室に行き衣服を脱ぐと、寒さで血管が収縮し、急激に血圧が上昇→そして、今度は熱いお湯につかるため、血管が拡張して血圧が急降下→なおかつ再び、寒い脱衣所に移動すると、またもや血管が収縮し血圧が急上昇するといった「血圧の乱高下」が、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などの原因になってしまうというもの。このヒートショックで、もっとも影響を受けやすいのは高齢者や血圧の高い方々なのです。
しかし、それだけではなく、高齢者にとってお風呂は、数多く危険が潜んでいる場所です。
・お風呂でうたた寝をして、溺れそうになる
・浴槽のふちに足を引っかけて、転倒しそうになる
・お風呂の床に落ちていた石鹸に気づかず踏んで、滑って転んでしまう
・ヒートショックを起こし脱衣所やお風呂場で倒れてしまう
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<入浴中の事故を起こさないための工夫>
衣服をまとわず無防備な状態で、しかも密室のお風呂。それゆえに、事故が起きた際の状況が深刻になってしまうことがあります。だからこそ、とくに注意しましょう。
・冬場はお風呂のふたを開けて浴室を温めておく
・脱衣所に小さな暖房機器を置く(とくに安全性の高いものを選ぶ)
・滑らないようお風呂場の床についた水滴をふきとってから入浴
・お風呂の床を、接触温熱感や衝撃吸収性、防滑性、水はけに優れたものにリフォーム
・1人ではなく、高齢者のご家族が、お手伝い、見守るかたちで入浴してもらう
・自宅では入浴せず、デイサービスを利用した際に入浴
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<外出時の事故例>
「ちょっと近所に出かけるだけだから」と思っても、思わぬ事故が起こってしまう場合があります。
・自分がマフラーを引きずっていることに気づかず、踏んで転倒
・スニーカーのヒモが緩んでいたために、もう片方の足で踏み転倒
・ズボンが自転車に引っかかり、それを取ろうとして転倒
・サンダルで自転車に乗った際、引っかかってバランスを崩し転倒
・雨上がりに履いていたサンダルが滑り階段で転倒
・地面の凹凸にサンダルが引っかかり転倒
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<外出時に事故を起こさないための工夫>
自宅にいるときと同様、ちょっと衣服や靴に気を配ることで、事故を防ぎやすくなります。
・外出するときは、どんなに近所でも必ず”かかと”のある靴を履く
・靴は自分のサイズに合ったものを履き、脱げやすくなったり、足が痛くなったりしないようにする
・ズボンやスカートの裾は長すぎないものを選ぶ
・ウエストが緩んでいるズボンは穿かない
・自転車に乗るときは、裾が広がったズボンを穿かない、あるいは裾をバンドでまとめて乗る
・マフラーやストールは、長く引きずらないよう、しっかり体に身につける
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  • 転倒しないために――高齢者におすすめの運動

外的な工夫も有効ですが、高齢者の方が転倒事故を防ぐために体づくりをすることも大切です。とても簡単で、効果的な運動をご紹介しましょう。

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<片足運動>
テーブルなどに手をついて支え、片足で立つだけの運動です。左右1分間ずつほどの片足立ちを、気がついたら1日数回行いましょう。

<スクワット>
スクワットは、人間の筋肉の70%を占めるという下半身の、さまざまな部位を鍛えられる優れた筋肉トレーニングです。テーブルなどに手をそえて、無理がない範囲で「膝を曲げ→伸ばす」を5~6回ほど繰り返しましょう。それを気がついたら1日数回行います。ただし、テーブルには手をつきますが、膝を曲げ伸ばしするのは、できるだけ下半身の力で行いましょう。不安であれば、すぐ座れるように椅子の前で行ってください。

腰痛の方は、テーブルに手をついて、椅子から「ゆっくり立ち上がり→座る」を、少し繰り返すだけでも効果がありますよ。

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  • おしまいに

住み慣れた町で、そしてどんな場所よりも落ちついて過ごせる自宅で「安全」に過ごすことは、高齢者にとって非常に大切なことです。常に不安を抱えて生活するのは、精神的な部分にも悪い影響を及ぼしかねません。事故の危険や不安を取り除き、楽しく安心して暮らせるよう、ぜひ色々工夫してみてください。自治体により、バリアフリーリフォーム補助金を受けられる場合もあります。そのほか心配事があれば、ご家族だけで悩まずに、地域包括支援センターや市区町村窓口にご相談しましょう。

また、高齢者の方のお体の状況によっては、高齢者施設で過ごすほうが安心できる場合もあります。その際は、老人ホーム紹介事業者などにご相談してみましょう。

なお、高齢者の方は加齢とともに肌が乾燥するため、衣服の素材には敏感に反応してしまう場合があります。とくに夏の涼感や、冬の防寒のために化学繊維素材を着用して、皮膚トラブルが出てしまうようです。自分の体質に合った素材を選び、ぜひ心地よくファッションを楽しんでくださいね。

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  • おさらい

高齢者の方は普通に自宅などで生活をしていても、足腰が弱くなっているため、思わぬ事故が起こる場合があります。主には以下のとおり。

・カーペットや布団、電気コードにつまずいて転倒
・階段の最後の一段を踏み外して転倒
・靴下が滑る、スリッパが引っかかるなどして、落ちたり転倒したりする
・玄関でサンダルを脱ぎ損ねて、引っかかり転倒
・調理中エプロンが溶けた、火がつきそうになった
・ガスコンロの奥に手を伸ばした際、衣服が燃えて火傷
・ストーブをつけたまま出かけそうになった
・こたつ代わりにするため、電気ストーブに毛布をかけた
・エアコンのスイッチを間違えて、真夏なのに暖房にして熱中症に
・お風呂でうたた寝をしていたら溺れそうになった
・お風呂でヒートショックが起こり倒れた
・サンダルやズボンが自転車に引っかかり転倒

以上のような事故を防ぐため、様々な工夫が必要です。

・カーペットは部屋の端まで敷きつめ、電気コードは歩く場所にはわせない
・できるだけ下に物を置かず、靴下はずべり止めがついたものを、室内履きは”かかと”がついたものを履く
・外出の際も、サンダルは避け”かかと”のついたものを選ぶ
・ガステーブルのまわりは整理整頓し、奥に物を置かない
・調理時など火を使うとき、裾や袖が広がったものは着ない
・防火エプロンやアームなどを使用する
・暖房機器のまわりに燃えそうな物を置かない
・自動OFFになる暖房機器を使用する
・エアコンは季節に応じて必要なボタンを残し、あとは押せないよう覆い隠す
・入浴時にはお風呂のふたを開けて、浴室を温めておく
・お風呂はデイサービスなどで入る
・自転車に乗る際は裾が広がったズボンは避ける、あるいはバンドで止める