なんらかの理由で腎臓がうまく働かなくなると、体のなかに溜まった余分なものを排出できなくなります。その際に、腎臓の機能を代行してくれる治療法が人工透析です。人工透析を必要とする方が、老人ホームに入居する場合のポイントやリスクなどを説明します。

1.人工透析が必要な疾患一覧

腎臓には、食事などで体に溜まった余分な水分や塩分、老廃物を尿として体外に排出すること、貧血を防ぐ造血ホルモンをつくること、カルシウムの吸収を促すビタミンをつくることなどの役割があります。

しかし、以下の病気が進行すると、これらの機能が次第に損なわれてしまいます。そこで、腎臓のもっとも重要な役割である、余分な水分・塩分・老廃物の排泄を代行してくれる人工透析が必要になります。腎機能が10%以下となった場合、腎移植を行うか、この透析療法を行わなければなりません。

人工透析が必要な疾患名         主な状態
慢性腎不全 糖尿病や高血圧などが原因で腎機能が不可逆的(元に戻れない)に低下。末期は尿毒症になり、意識障害・嘔吐・呼吸困難・腹水(体液がお腹に蓄積)・浮腫(ふしゅ=むくみ)などが生じる。
糖尿病性腎症 糖尿病における三大合併症のひとつ「腎症」を引き起こし、腎不全まで進行すると、夜間尿や浮腫が起こる。腎不全が進行すると尿毒症が起こる。
腎硬化症 高血圧が長期間続くと、腎臓の血管に動脈硬化が起こり、腎臓へ流れる血液量が減少し、腎臓そのものが硬くなって機能が低下してしまう。
慢性糸球体腎炎(慢性腎炎) 糸球体の炎症によって、タンパク尿や血尿が出る病気の総称。少なくても1年以上はタンパク尿や血尿が持続するものを指す。その原因としてもっとも多い病気が、IgA腎症。尿タンパクが多い状態を放置すると、10年で約30%が慢性腎不全に移行。
2.人工透析が必要な方の老人ホーム選びのポイント

人工透析を必要とする方が、老人ホーム選びをする際のポイントは次のとおりです。

  • 人工透析が必要な方のケアに熟練している
  • 透析クリニックや透析病院と医療連携している
  • 入院など、急変時への対応がしっかり整っている
  • 施設または医療機関に通院送迎サービスがある
  • 日中は看護スタッフが常駐(あるいは訪問)
  • 介護スタッフは24時間常駐で急変時の対応が可能

人工透析が必要な方の場合、週に2~3回は通院が必要です。施設で通院送迎の対応ができる場合は有料サービスといったケースが多く、医療機関の送迎サービスがあれば、おおむね無料で利用できるという傾向です。

認知症状の方の入居の場合、透析中4時間程度の常時見守りが必要になるため、その対応も求められます。施設によっては常時、ヘルパーの付き添いが困難なため、家族の付き添いが求められたり、別途費用が必要だったりなどお互いの条件が合わない場合も考えられます。事前に対応できる範囲を事前に確認しましょう。

水分・塩分・タンパク質・カリウム制限などのケアに熟練しているか、食事の制限内容はご本人に合っているかなど、しっかり確認しておくといいでしょう。
また、シャント(人工透析に必要となる特殊な血液回路)部分を強くこすると血管が損傷することがあるため、入浴時には擦りすぎないこと、血圧低下などをいち早く察知することなど、細かなケアが必要です。

治療とともに合併症にも注意が必要なので、人工透析の対応レベルが高いことも老人ホーム選びにおいては重要です。

3.人工透析が必要な方の入居条件

人工透析で必要となる、水分や塩分に対する制限については、比較的多くの施設で対応が可能です。しかし、タンパク質やカリウムの制限となると、一般的な施設では調整が難しい場合があります。

また、人工透析が必要な方の場合、日ごろの健康管理が不可欠であり、状況によっては透析時に施設の職員が半日以上も付き添いでかかりきりになる場合もあるため、人工透析が必要な方の受け入れが可能な老人ホームは、数が限られているというのが現状です。ただし、以下の条件が整っている場合は、比較的入居しやすい可能性があります。

  • 通院する透析病院との連携がとれている
  • 透析中の付き添いは不要である
  • 送迎は医療機関あるいは介護タクシー利用
  • タンパク質、カリウム制限がない

こうした条件が合わない場合は、安心して入居生活を送れるよう、透析患者に対するケアが万全な施設を根気強く選んでいきましょう。

4.人工透析が必要な方の入居上のリスク

人工透析を行うと、体のバランスが崩れて様々な症状を起こすことがあり、合併症を起こす危険性もあります。合併症の多くは食事療法などで予防することが可能ですが、既に合併症を持っている場合などには、さらに悪くならないよう注意が必要です。

そうしたことから人工透析を行う場合、様々な科(循環器内科、消化器科、糖尿病内科、泌尿器科など)と連携しながら病状の管理を行うことになります。老人ホーム選びをする際には、医療連携に関する説明を聞き、施設で対応できる医療ケアの内容や協力医療機関の診療科目、協力内容をしっかりと確認しておきましょう。

入居後に体の状態が悪くなり、医療的依存度が高くなったり、介護度が上がったりするケースも少なくありません。いざというときに、必要な介護・医療支援を受けながら入居を継続できる契約かどうか、あらかじめ確認しておくことも大切です。

5.おしまいに

人工透析の患者数は右肩上がりですが、専門の医療機関との連携や、通院送迎、細やかなケアと管理、緊急時の対応などが必要なため、人工透析が必要な方の受け入れが可能な老人ホームは限られています。

しかし、だからこそ、透析患者さんの受け入れや、専門医療機関との連携をしっかりと示している施設には、安心して入居できるともいえます。

それに加え、入居者が尊厳を持って過ごすことができるような、心に寄り添った介護・看護を行なっているかどうかを見極めておけば、より心地よい入居生活を送れるはずです。