高齢でも心身ともに健康で自立した生活ができるように支援する介護予防について、その概要、対象者、目的、地域事業について解説します。

■介護予防の目的と背景、および介護保険上の位置づけ

介護予防とは、高齢者が要介護状態になること予防し、できるだけ要介護状態になることを遅らせること、および要介護状態になっても、その悪化をできる限り防止するとともに要介護状態の改善を目指すことを目的としています。なお、要介護状態とは、介護保険が定める利用限度枠を認定するために設けられた基準で、介護度が低い順に「要支援1・2」と「要介護1~5」の7段階があります。

介護予防の背景には、もともと介護保険制度は、医療費の膨張を防ぐ目的の制度でしたが、予定をこえて介護サービスの利用者が増加し、国の介護費用の負担が大幅に増えたことがあります。費用を抑えるため「介護予防重視」を目指す介護保険法の改正が2006年に行われました。

国は、介護保険で高齢者の自立した生活支援を行いますが、一方で国は国民に対して自らの努力で、要介護状態となることの予防を求めています。そこで、介護保険法で「加齢に伴って生ずる心身の変化を自覚して常に健康の保持増進に努めるとともに、要介護状態となった場合も、進んでリハビリテーションその他の適切な保健医療サービスおよび福祉サービスを利用し、自立した生活ができる能力の維持向上に努めるものとする」と定めています。つまり、介護予防を行うことは国民の義務としています。

■介護予防は運動機能や栄養状態の改善だけではない

介護予防というと、運動機能や栄養状態の改善と一般的には理解されていますが、それだけではありません。体だけでなく心も含めた心身機能の改善を要介護者の生活環境も考慮して、高齢者の生活活動レベルと社会生活する上での生きがいになる生活参加(役割)レベルを上げて、生活の質(QOL)の向上を目指しています。

これにより、国は国民の健康寿命をできる限りのばすとともに、単に長生きするだけではなく生きていることが喜ぶに値する長寿社会の樹立を介護予防の目的としています。

そのため、介護予防で行われる運動機能向上など一つひとつのサービスは、目的達成のための一手段に過ぎません。目的を間違えると、介護予防とは運動機能向上やその他の個々のサービスだけを行っていれば良いと間違えることになるので注意が必要です。

■介護予防におけるケアマネジメントの重要性
一般的に介護予防対象の高齢者は、心身の生活機能の低下をすでに経験し、機能が改善するはずはないといった誤解やあきらめを持っています。また、うつ状態で意欲が低下していることも考えられます。そこで、介護予防では、高齢者の意欲の程度、心身の状態、生活背景を配慮した上で積極的な働きかけを行うことが求められており、ケアマネジメントの役割が重要です。

介護予防ケアマネジメントでは、生活機能を改善するという意欲が落ちている高齢者に対して、意欲を促すことが必要です。そのために、介護予防サービスを利用後の生活における心身両面の変化を分かりやすく伝えることが重要です。そして、個々の高齢者にあった最終的な目的に対して、「いつまでに」「どのようにすれば」「生活機能が改善できるか」という手段として個々のサービスを選択しなければなりません。

■介護予防サービスの概要

介護予防における重要な介護予防サービスは、「要支援1・2」の人を対象に提供されます。なお、2015年の介護保険法の再改正で、「介護予防訪問介護」「介護予防通所介護」の2つのサービスは、2017年度末までに国の介護保険から外れて、市区町村の地域支援事業(総合事業)に移行します。総合事業では市区町村の裁量範囲が広くなり介護認定を受けていない人も対象となります。サービス内容、費用は市区町村で決められます。2つのサービス以外は、今まで通りに介護保険の予防給付で行われます。

「予防給付(介護予防サービス)」で提供されるサービスは以下の通りです。

1.訪問してもらって受けるサービス(自宅訪問型)

1-1 介護予防訪問介護
日常生活は基本的にできるが、若干不便に感じることがある人向けのサービスで入浴や食事などの補助を行うサービスです。

1-2 介護予防訪問入浴介護

補助しても自宅のお風呂で入浴が困難な人に対して介護用のバスタブなどを使って入浴を支援するサービスです。

1-3 介護予防訪問看護
介護予防を目的とした療養上のお世話や診療の補助を行うサービスです。

1-4 介護予防訪問リハビリテーション
心身機能の維持回復および日常生活の自立を助ける為、理学療法士、作業療法士など医師の指示に基づく、必要なサービスを行います。
1-5 介護予防居宅療法管理指導
「歯など口内の健康」「栄養管理」など療養上の管理や指導、助言を行うサービスです。

2.施設に通って受けるサービス(施設通所型)

2-1 介護予防通所介護
「デイサービス」と呼ばれ、施設内で排せつ・入浴などの支援や簡単な機能訓練が行われるサービス。

2-2 介護予防通所リハビリテーション
「デイケア」と呼ばれ、医師の指導に基づいて施設内で「リハビリ」が行われるサービスです。リハビリは、「機能の改善」が主な目的で機能訓練は「予防」「現状維持」が主な目的です。

3.施設に短期間入所して受けるサービス(施設入所型)

3-1 介護予防短期入所生活介護
特別養護老人ホーム等に短期間入所し、入浴、排泄、食事の介護、機能訓練等が行われるサービスです。

3-2 介護予防短期入所療養介護
介護老人保健施設等に短期間入所し、リハビリ、機能訓練、その他必要な医療や、日常生活の世話が受けられるサービスです。
■市区町村の「地域支援事業」とは

2006年の介護保険法の改正で高齢者が地域で自立した日常生活を送れることを目的として市区町村が実施する「地域支援事業」が創設されました。市区町村が行う地域支援事業は以下の3つに分かれています。

・介護予防事業:要介護認定で非該当になった人を対象に行う事業
・包括的支援事業:地域包括支援センターが行う相談業務など
・任意事業:市区町村がそれぞれ独自の工夫で行う事業

このなかで、重要なのは高齢者が要支援・要介護状態にならないように予防する事業が「介護支援事業」です。介護保険上の介護予防の対象者は、要介護認定で要支援者に認定された人です。しかし、認定で非該当と判定された人や、介護保険を利用しない意思があり要介護認定を受けていない人がいます。

それらの人に対して何もサービスを提供しないと、要支援認定されなかった人もいずれ要支援・要介護状態になる可能性があります。また、要介護認定を受けなかった人もやむなく認定を受けるようになる可能性があります。これら「非該当」の高齢者に対し、介護予防への意識を高く持ってもらい、地域で健康な生活ができるように支援を市区町村が主体となって行うのが地域支援事業の1つ「介護予防事業」です。

なお、現在は市区町村によって移行期間中ですが、2018年度から「介護予防事業」は、完全に「総合事業」(介護予防・生活支援サービス事業と一般介護予防事業)に発展的に変更されます。

変更は、地域がそれぞれの実情に応じて判断して介護予防や生活支援ができるように、また地域の住民同士でお互いに助け合えるようにするためと考えられています。

■まとめ
介護予防について、その概要、サービスが受けられる対象者、目的、地域事業について解説しました。ただ単に長生きするだけでなく生活の質(QOL)を高めて自立した生活を行う健康寿命が注目されています。そのためには介護予防の重要性を理解して積極的にサービスを利用することが必要です。