下流老人(介護離職による問題)

超高齢社会となった日本は、数多くの問題を抱えています。社会保障費の増大や、介護・医療現場の人材不足、介護離職などなど……。そのなかで、近年「下流老人」という言葉が生まれ、人々の関心を集めています。この言葉は、貧困化した高齢者の方を言い表しているのですが、実は一部の層だけにかかわる問題ではありません。

現役でバリバリ働く世代も、将来陥る可能性があるからです。また、安定した収入を得ていた人が、「下流老人」になってしまうことも多くあるのだとか。そして、それには「介護離職」という社会問題が大きく影響しています。

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  • 下流老人とは

「下流老人」とは、20万部超のベストセラーとなった『下流老人(朝日新書)』の著者、藤田孝典氏がつくった造語です。同氏はそれを“生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者”と定義づけており、「このままだと高齢者の9割が貧困化していく」としています。

厚生労働省の、生活保護の被保護者調査(平成28年11月分概数)の結果によると、生活保護を受給している世帯は1,639,525世帯で、増加傾向にあります。しかも、増加しているのは高齢者世帯(特に単身世帯)のみで、高齢者世帯を除く世帯の数は減少しているとのこと。

生活保護を受けている高齢者世帯は、全体の51.4%に当たる83万7,742世帯で、前年の同月と比べると33,896世帯も増加しています。このように、高齢者貧困の波はすでに大きく打ち寄せています。そして、その状況へと陥っていく原因とされているのが、病気や離婚、そして「介護離職」なのです。

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  • 介護離職から下流老人へ

ある日突然やってくる介護。その大変さは、実際その立場になってみなければわからないことです。そして、身近な方の介護を行うため、仕事を辞めざるを得なくなる「介護離職」は、その世帯の生活そのものを窮地に追い込んでしまいます。

平成24年就業構造基本調査(総務省統計局)によると、過去1年以内(平成23年10月~24年9月)に介護などの理由で離職した方は、年間10万人にも達しています。今後ますます増えていくことが懸念される介護離職を食い止めるため、政府も緊急対策を打ち立てていますが、その内容については、まだまだ多くの問題が指摘されています。

実はこの「介護離職」こそが、安定した職業に就いていた人や、経済的に余裕があった人でさえも「下流老人」にしてしまう、大きな落とし穴なのだとか。

たとえば、安定した仕事や預貯金もあった人が、ある日介護のために仕事を辞めざるを得なかったとします。最初は退職金や預貯金、可能な時間で働けるアルバイトなどで生活はなんとかなるでしょう。しかし、預貯金は必ず底をつくものであり、介護の度合いもどんどん重くなっていくのが一般的です。そうなると、働くこともままならず、生活が困窮してしまうのです。

もしくは、ある程度の収入を得て、かなりの預貯金があり生活に余裕があった人でも、離れて暮らす身内が認知症などを発症し、帰省の交通費などを含め、かなりの出費が必要となることもあります。おまけに、その時点で住宅ローンが残っていて、何らかの事情で子供にもお金がかかれば、貯金はあっという間に底をつくでしょう。

また、もしくは、介護のために転職、もしくは会社を辞めて収入が大幅に減少しても、その状況に見合った生活レベルに変えられない人も少なくないようです。そのため、むしろ経済的に恵まれていた人の方が、介護離職などがきっかけで「下流老人」に陥りやすいと、『下流老人(朝日新書)』の著者である藤田孝典氏は伝えています。

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  • おしまいに~

病気や離婚、そして「介護離職」はだれにでも起こり得ることです。そのため、可能な限りお金は貯めておくべきでしょう。ただ、歳を重ねると病院や薬、介護サービス費など、あらゆることにお金がかかります。それに、先述したとおり、収入が減れば貯金は減っていくものですよね。

そして何よりも、介護を理由に離職してしまう前に、うまく介護保険制度を利用しながら、離職せずに働き続けることをおすすめします。厚生労働省は、介護離職を防止するため企業に対し、仕事と介護の両立支援への取組を呼びかけています。ご自身が働く会社で、介護に関してどのような取り組みをしているか、一度問い合わせておくべきでしょう。ご家族だけで抱え込まず、職場や地域の制度やサービスを最大限に活用することが重要です。

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  • おさらい

「下流老人」とは、『下流老人(朝日新書)』の著者、藤田孝典氏がつくった造語です。“生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者”と定義づけており、「このままだと高齢者の9割が貧困化していく」としています。

生活保護を受けている高齢者世帯は、全体の51.4%に当たる83万7,742世帯で、前年の同月と比べると33,896世帯も増加しています。

「下流老人」へと陥っていく原因とされているのが、病気や離婚、そして「介護離職」です。

預貯金があっても、介護離職などで収入が減り、おまけに住宅ローンなどが残っていたら、あっという間に誰でも「下流老人」になってしまいます。つまり、現役でバリバリ働く世代も、安定した収入を得ていた人でも、「下流老人」になってしまう可能性があるということです。

「下流老人」になるリスクを回避するために、うまく介護保険制度を利用しながら、離職せずに働き続けることをおすすめします。また、ご家族だけで抱え込まず、職場や地域の制度やサービスを最大限に活用することが重要です。

■問い合わせ窓口:地域包括支援センター、市区町村、各企業