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  • 自分の状況を認識する力

認知症の専門書によく載っている「見当識障害」。認知症の初期症状のひとつで、代表的な症状である中核症状でもあります。しかし普段聞き慣れない言葉のためいまひとつイメージがつかめない障害ではないでしょうか。

「見当識」とは、自分が置かれている状況を認識する能力のことです。「今日は何月何日か」「今何時か」といった「時間」に対しての見当識、「今自分がどこにいるのか」「トイレはどこか」といった「場所」に対しての見当識、「この人は誰か」といった「人」に対しての見当識などがあります。見当識障害はこれらが正確に認識できなくなってしまう症状です。アルツハイマー型やレビー小体型認知症の患者によく見られるもので、認知症かどうかの重要な判断材料になります。 認知症のもうひとつの代表的症状「物忘れ」は、正常の老化でも起きるためです。たとえ物忘れがあっても今がいつか、ここはどこか、自分は誰かといった見当識がハッキリしていれば認知症ではなく老化である可能性が高いと判断できるのです。一方、見当識に曖昧な部分が出てきたときは認知症を疑う必要があります。見当識が正常であるかは簡単な問診で把握することができるので、医師による診断の際にもよく確認されるポイントです。

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  • 症状は

見当識障害は、引越しや入院などの環境変化が引き金となって強くあらわれるとされています。一般的に「時間」「場所」「人」の順で進行するといわれており、初期症状は日付や時間を間違えることです。今日の日付は普通の状態でも間違えることがあるものですが、この障害では今が何月であるかも分からなくなってしまいます。朝昼晩の感覚もなくなってしまい、天気が悪く外が曇っていると昼間でも夜だと勘違いしたりします。自分の年齢が分からなくなり、年齢を尋ねられると実際より若い年齢を答えてしまうようになります。障害が進行すると次に認識しにくくなるのが場所です。自分がいる場所が分からなくなってしまうので、外出した際に迷子になるといったトラブルが増えます。自宅の中でもトイレの場所や自分の部屋などを間違えるようになります。場所そのものへの認識も薄れるため、病院に行っても病院だと認識できないといったことも起こります。そしてさらに症状が進むと人を間違えることが多くなります。たまに会っていた友人や親戚を間違えたり、自分の孫を子どもと間違えたりするようになります。

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  • 対策は

では、家族や周りの人が見当識障害になってしまったらどうすれば良いのでしょうか。大切なのは、「冷静に対応する」ということです。間違いをむやみに指摘せず、話を合わせると良いでしょう。本人は約束の時間が訪れている認識がなかったり、目の前で話している人が誰か分からず困惑したりしている状態です。その状態で怒ったり責めたりしても、余計に興奮させたり混乱させたり自尊心を傷つけたりしてしまいます。もし外で事情を知らない人とトラブルになってしまった場合でも、その場では本人に話を合わせましょう。そして後で本人聞こえないように相手方に事情を説明する、といった対処が求められます。

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  • 具体的には

見当識障害の初期であれば、大きめのカレンダーを貼って毎朝家族と一緒に今日の日付にマルをつける、という行動を日課にしてもらうと良いでしょう。その時に「今日は何日何曜日」と声に出してもらうと頭に残りやすくなります。カレンダーと同様に時計を常に目にするのも効果的で、文字盤を見ながら「もうお昼だ」「寝る時間だ」などの声かけをします。すると時間に対しての感覚が残りやすくなります。午前中にできるだけ日光を浴びる生活をして、「朝」だと実感してもらうのも効果的です。自宅のトイレを間違えてしまう場合は、部屋をトイレの近くに変えてあげるのも良いでしょう。そしてトイレのドアに分かりやすく「トイレ」と書いて貼るといった工夫もしてみましょう。また、適度な散歩は脳へ刺激を与え気分転換にもなります。「迷子になってしまうかも」と家に閉じこもってしまうのはよくありません。ただし介助者が必ず一緒についていってあげてください。

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  • 予防法は

見当識障害は認知症の初期に現れる症状です。そのため認知症を予防することが見当識障害の予防につながります。睡眠を十分にとった規則正しい生活や適度な運動、3大栄養素(たんぱく質、炭水化物、脂肪)をバランスよく取り入れた食事などです。特に抗酸化物質を含む食材は認知症予防に効果があるとされています。また、趣味を持ったり人と交流したりすることは脳に刺激を与えるので、認知症だけでなく老化も防ぐことができます。

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  • おさらい

見当識障害とは、認知症でよく見られる症状で「時間」「場所」「人」など自分が置かれている状況が分からなくなることです。今が何月か分からなくなったり、知人と会っても「知らない」と言ったりします。周りの家族は戸惑ってストレスを抱えてしまうこともあるかもしれませんが、決して怒ることなく、冷静に本人の話に合わせる対応が求められます。毎朝一緒に日付を確認する、散歩をする際には必ずついて行くなど、寄り添いながらフォローしてあげましょう。