• 現状と政府による対策

総人口における高齢化率が21.5%となった日本は、超高齢化社会(※1)といわれています。総務省の調査によれば、過去1年以内(平成23年10月~24年9月)に介護などの理由で離職した方は、年間10万人(※2)にも達しています。

介護離職とは、その名のとおり身近な方の介護を行うため、仕事を辞めざるを得なくなってしまうことです。そして、ワークライフケアバランスとは、仕事と介護の両立を意味しています。

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  • 介護離職の現状

大変な仕事や、職責の重い仕事をしながら介護をするケースは、決して少なくありません。しかし、仕事と同じように、介護は肉体的・精神的にとても過酷です。それに、突発的なことが起こり、仕事のスケジュールが狂うこともあります。そのため、介護が始まると、仕事を継続することが難しくなってしまうのです。

平成25(2013)年7月に発表された総務省の調査によると、介護をしながら仕事をしている男性は約130万人、女性が約160万人(※2)です。しかし、平成24(2012)のアンケート調査(※3)では、仕事と介護を両立するにあたり「自分の仕事を代わってくれる人がいない」「介護休業すると収入が減る」「人事評価に悪影響がでる」といった不安内容が上位にあがっています。

そして、「会社に介護休業制度等がないこと」を不安内容としてあげていた方の多くが離職されています。この結果は、数年前はまだ「介護休業」について周知がなされていなかったことを示唆しています。

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  • 政府が掲げた「介護離職ゼロ」の対策とは

安部晋三首相は平成27(2015)年9月24日、総裁再選が正式に決まったことを受け、「希望を生み出す強い経済」「夢をつむぐ子育て支援」「安心につながる社会保障」という『新3本の矢』を発表しました。そのなかで立てられた明確な目標のひとつが、「介護離職ゼロ」です。その目標を達成すべく、緊急対策(※4)として打ち立てられたのが、以下のような内容です。

<特別養護老人ホームの大幅整備>

特別養護老人ホーム(特養)に入居できず離職している方々をなくすため、特養を大幅整備。施設を増やし、平成25(2013)年度で約52万人いた特養の入所待機者(※5)を、2020年初頭までに解消することが目標。そのほか、サービス付き高齢者向け住宅の整備なども加速させる。

<介護サービスにおける人材育成>

人材を育成し、確保するため、離職した介護職員の再就職支援、返還免除付き学費貸付の対象拡大(介護福祉士を目指す学生等向け)、事業主に対する助成拡充などを行う。また、介護ロボットなどによる現場の負担軽減で離職を防止。ほか、介護事業における事務負担を軽減し、生産性を向上させる。

<介護における相談機能の強化>

地域や職場での相談機能を強化し、介護や仕事の両立について、ケアマネジャー(介護支援専門員)が助言できる体制を整える。また、見守りや支援を推進し、介護保険制度についての周知徹底を図る。

<介護休業・介護休暇をとりやすい職場>

平成28年3月に改定され、平成29(2017)年1月1日から施行される育児・介護休業法(※6)では、対象家族1人につき3回を上限として、通算93日まで介護休業を分割取得できることのほか、介護休暇の半日単位の取得や、労働時間の短縮措置等の利用、所定外労働の免除、有期契約労働者の介護休業取得要件の緩和などが整備。ほか、介護休業給付の給付水準引上げを検討(40%→67%)。

<高齢者の重症化予防>

生涯を通じた健康づくりに取り組むことで健康寿命をのばし、介護離職の原因となる高齢者の重症化を予防。高齢者の低栄養や心身機能の低下を予防するため、保健指導等を推進する。

<高齢者の就労機会を確保>

低年金受給者への支援や、高齢者が働きやすい・働き続けやすい環境をつくることで、高齢者が経済的に自立し、生きがいをもって社会に参加できるよう整備を行う。

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  • おしまいに

家族の介護をしなければならない状況は、突然やってくることが多いものです。だからこそ、用意周到に待ち構える人はあまり存在しません。また、いざ介護生活が始まってみると大変な状況に加え、どんどん変わりゆく生活に心身がついていけないことがあります。それに、介護のために仕事を辞めてしまうと、趣味や人付き合いからも遠ざかり、金銭面でも苦しい状態に陥ってしまうことが多々あるのです。

しかし、家族の介護で大変な思いをしているのは、決して一部の方のみではありません。また、まだまだ多くの問題が指摘されていますが、政府も「介護離職ゼロ」という目標を掲げ、対策に取り組んでいます。

ご家族だけで抱え込まず、職場や地域の制度やサービスを最大限に活用しましょう。また、介護と仕事の両立、いわゆるワークライフケアバランスを保つための支援サービスも、少しずつ増えてまいりました。お仕事を離れてしまう前に、いま一度、信頼できる専門家に相談し、社会と一緒に介護を行うことをおすすめします。

(※1)

日本の高齢化率が21.5%になったのは平成19(2007)年
高齢化率の定義は世界保健機構(WHO)および国連によるもの(総人口における高齢化率7%以上→高齢化社会・14%以上→高齢社会・21%以上→超高齢社会)

(※2)

「平成24年就業構造基本調査 結果の概要(総務省統計局)」

(※3)

「仕事と介護の両立に関する労働者アンケート調査……5.(平成24年度厚生労働省委託調査)」

(※4)

「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策(平成27年11月26日・一億総活躍国民会議)」

(※5)

特別養護老人ホームの入所申込者の状況(厚生労働省 平成26年3月26日付資料)

(※6)

「改正育児・介護休業法及び改正男女雇用機会均等法の概要(厚生労働省)」

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  • 【おさらい】

    介護離職とは、介護を行うため仕事を辞めてしまうことです。ワークライフケアバランスとは、仕事と介護の両立を意味しています。

    過去1年以内(平成23年10月~24年9月)に介護などの理由で離職した方は、年間10万人に達しています。この状況を受け、安部晋三首相は平成27(2015)年9月24日に『新3本の矢』を発表しました。そのなかで立てられた明確な目標のひとつが、2020年を目途に介護離職をゼロにするというものです。

    対策の内容には、特別養護老人ホーム(特養)の大幅整備、介護休業が利用しやすいよう制度を検討、高齢者の重症化を予防するために医療基盤を強化するなどがあり、それに沿い推進されています。

    ■問い合わせ窓口:地域包括支援センター、市区町村、各企業