• 政府による対策の問題点と企業の取り組み

過去1年以内(平成23年10月~24年9月)に介護などの理由で離職した方は、年間10万人に達しています。この状況を受け、政府は「介護離職ゼロ」という目標を掲げました。また、事業主に対しては「介護離職防止支援助成金」を創設し、「企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル」の活用と実施を呼びかけています。

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  • 「介護離職ゼロ」対策と問題点

介護離職防止のため政府が対策として打ち立てたのは、多くの入所待機者がいる特別養護老人ホーム等を増やして、2020年代初めまでに50万人分の受け皿を拡充すること。そして、介護休業制度を利用しやすくすること、また、高齢者の重症化を予防するために医療基盤を強化することなどです。

しかし、ただでさえ現場では介護職員数が足りていないことや、過酷な労働環境や待遇が問題視されています。その状況において、施設を増やすだけでは根本的な問題の解決にはならないのではないか、という声が多くあります。

厚生労働省の推計(※1)によると、2025年に向け必要とされる介護人材は253万人。それに対して見込める介護人材は215.2万人。つまり、37万人ほど介護人材が不足するという推計です。

このことからも、今後さらに介護現場の人材不足が深刻化するのは目に見えており、政府の対策はそれを助長するという考えもあります。対策のなかには「介護人材の育成・確保」というものもありますが、なによりも先に「介護の現場で働く人の待遇を改善すべきでは?」という意見が数多くあります。

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  • 企業における介護離職防止への取組

厚生労働省は、介護離職を防止するため企業に対し、5つの「仕事と介護の両立支援への取組(※2)」を、継続して実施することを呼びかけています。その概要は以下の通りです。

1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
従業員が抱えている介護の問題や、介護休業・介護保険制度等の理解度をアンケート調査で把握。

2.制度設計・見直し
基準を満たしているか、制度が周知されているか、手続きがわかりやすいか、従業員のニーズに対応しているかなどの観点から点検・見直しを行う。

3.介護に直面する前の従業員への支援
従業員が介護に直面する前に、仕事と介護の両立に関する情報を提供し、支援を行うことがきわめて重要。

4.介護に直面した従業員への支援
介護に直面している従業員に対して、仕事と介護の両立における自社制度の利用、地域の介護サービス利用などを支援する。また、社内において相談しやすい体制を整備。

5.働き方改革
介護のために時間制約のある従業員に対し、残業時間の削減や、年次有給休暇を取得しやすいようにする。また、仕事上の情報共有を行い、支援し合える職場風土づくりをする。

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  • 企業における仕事と介護の両立支援の実情

介護による離職は、企業に大きな影響を及ぼします。そのため、企業は政府から発行されているマニュアルなどに沿いながら、介護に直面した、もしくはまだ直面していない従業員に対し、仕事と介護の両立支援を行っています。

しかし、平成27(2015)年10月に発表された、株式会社インターリスク総研が12,500 社に行ったアンケート調査(※3)によると、取組が進んでいる企業は4社に1社のみにとどまっており、取り組みを行っていないという企業が約半数あったことが明らかになっています。

なお、企業における仕事と介護の両立支援制度の周知や、介護休暇、半日休暇、時間勤務制度などを実施している企業は多いものの、社内研修や、介護に関する座談会、企業内における相談窓口の設置などは、まだ少ないという状況です。

介護は直面しないと実感がわきにくいことですが、誰にでも起こりうることです。そのため、介護の実情や、ワークライフケアバランスの意識を企業内で浸透させることが、非常に重要だと考えられます。

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  • 介護離職防止支援助成金について

介護離職防止支援助成金(両立支援等助成金)(※4)は、従業員の仕事と介護の両立のために以下4項目からなる取組を行い、要件を満たした事業主に支給されるものです。介護休業からの復帰や、時差出勤制などを導入している企業が対象で、支給額は企業規模などにより異なり、1事業主につき2人分まで支給されます。

1.仕事と介護の両立のための職場環境整備
2.介護支援プランによる介護休業の取得等の明文化・周知
3.対象労働者の介護支援プランの作成
4.介護支援プランに沿った介護休業の取得等

※介護支援プランとは……事業主が作成する働き方等についての計画です。

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  • おしまいに

政府による対策や、企業の取組においても、まだ課題は多く、問題は山積みです。ただ、何よりも大切なのは、企業や社会が、介護を行う方々に理解がある雰囲気を保つということです。どんなに制度が充実していても、それが活用しにくい社風であれば、結局は介護離職へとつながってしまいます。

社会全体の意識が変わっていくことで、必然的に企業での環境も変化するはずです。そのためにも、まだ介護に直面していない方々は積極的に情報を取得し、介護に直面している方々は、地域やあらゆる専門家に、積極的に相談していくことが解決への糸口となるでしょう。そして、そのなかで、横のつながりを紡ぎ、無理せずワークライフケアバランス(仕事と介護の両立)を実現してくださいね。

(※1)「2025年に向けた介護人材にかかる需要推計・確定値(厚生労働省)」

(※2)「平成27年度 企業における仕事と介護の両立支援実践マニュアル(厚生労働省)」……「介護離職を予防するための両立支援対応モデル(10P)」の各取組の概要

(※3)「仕事と介護の両立に関する企業実態調査 報告書 2015年10月(株式会社インターリスク総研)」

(※4)「両立支援等助成金(介護離職防止支援助成金)のご案内(厚生労働省)」

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  • 【おさらい】

政府が掲げた目標「介護離職ゼロ」を実現するため、企業において以下のような取組が行われることが求められています。しかし、平成27(2015)年の時点では、まだ半数近い企業は取り組みを行っていないという結果が出ています。

1.従業員の仕事と介護の両立に関する実態把握
2.制度設計・見直し
3.介護に直面する前の従業員への支援
4.介護に直面した従業員への支援
5.働き方改革

また、仕事と介護の両立支援制度の周知や、介護休暇、半日休暇、時間勤務制度などを実施している企業は多いものの、介護などの社内研修や、企業内における相談窓口の設置などは、まだ少ない状況です。

■問い合わせ窓口:地域包括支援センター、市区町村、各企業