何らかの病気で、体内に十分な酸素が取り込まれなくなった方に対して、長期にわたり酸素吸入を行う療法を、「在宅酸素療法」といいます。在宅酸素療法を必要とする方が、老人ホームに入居する場合のポイントやリスクなどを説明します。

1.在宅酸素療法が必要な疾患一覧

在宅酸素療法の英語名は Home Oxygen Therapy (ホーム・オキシゲン・セラピー)です。日本語名どおり「家(在宅)、酸素、療法」を意味しており、その頭文字をとって HOT と呼ばれることもあります。入院中のみではなく、自宅や施設でも行うので「Home(家・在宅)」という言葉が入ります。肺や心臓に、高度の機能障害がある方に必要な療法です。

在宅酸素療法が必要な疾患名 主な状態
慢性閉塞性肺疾患(COPD) 気管支、細気管支、肺胞などに慢性の炎症が生じ、空気の出し入れが悪くなったり、酸素と二酸化炭素の交換効率が悪くなったりする。
肺結核後遺症 結核は、結核菌による感染症。結核が治癒しても、重い後遺症で肺機能が低下し、慢性呼吸不全になる場合がある。
間質性肺炎 肺の間質に炎症や損傷がおこり、壁が厚く硬くなって、酸素と二酸化炭素のガス交換がうまくできなくなる。
慢性心不全 血液を送り出すポンプの役割を持つ心臓が、各臓器に十分な血液や栄養を送ることができなくなる状態が、長期間にわたっておこる。

在宅酸素療法を行い、体にとって必要な量の酸素を補充することで、呼吸困難の症状が軽減され、生活の質(QOL・Quality of Life)も向上することが期待されています。全国で在宅酸素療法を行っている患者さんは、約16万人を超えると推定されています。

2.在宅酸素療法が必要な方の老人ホーム選びのポイント

在宅酸素療法の方の受け入れが可能な老人ホームでは、一般的に看護スタッフが酸素取り扱い業者と連携し、酸素ボンベを交換・補充します。装置が壊れた場合などに備え、酸素ボンベの予備も用意されているので安心です。

また、居室では設置型の酸素濃縮装置を、移動時にはポータブルボンベを使用しますが、切り替える際のサポートは介護スタッフが行ってくれます。老人ホームは全館バリアフリーなので移動も快適でしょう。息苦しさやむくみ、動悸や発熱など、体調も管理してくれます。

しかし、あくまでも医療行為なので、治療にかかわることを介護スタッフが行うことはできません。酸素流量や吸入時間は医師からの指示を守る必要があるため、看護スタッフが常駐し、医師と24時間いつでも連絡がとれる体制を敷いている老人ホームを選ぶといいでしょう。体調変化の観察や、異常があった際の医師による診察、月1回の検診などが必要なので、医療機関との連携がしっかりしている施設であることもポイントです。

また、介護スタッフのなかには、在宅酸素療法に慣れていない人も少なくないので、「在宅酸素療法への対応経験が豊富なスタッフ」がいる老人ホームや、「在宅酸素療法を行っている入居者の受け入れ実績」がある老人ホームを選ぶと安心です。

3.在宅酸素療法が必要な方の入居条件

酸素吸入機等は、酸素取り扱い業者と契約を結ぶことでレンタルでき、医療費には健康保険が適用されます。

しかし、在宅酸素療法を必要とする方が老人ホームに入居する際は、「自分で在宅酸素の管理ができること」、「(管理が厳しい)人工呼吸器や簡易式人工呼吸器を使っていないこと」などの条件を満たす必要があります。「持ちこめる酸素ボンベの量や本数に制限がある」という場合もあります。

また、酸素を使っているため、火気には厳重な注意が必要です。そのため、施設から「酸素ボンベの設置位置を指定される」ことがあります。

4.老人ホームの入居リスク

実際、在宅酸素療法を必要とする方の受け入れは、看護スタッフが常勤し、医師と24時間連絡がとれる体制の老人ホームがより安心です。

また、在宅酸素療法の方を受け入れている老人ホームでも、入居者の方が認知症を発症していたり、その他の持病があったりする場合、入居を断られる場合があります。入居中に大きく身体状況が変化した場合も、退去が必要になることがあります。

あらかじめ、施設で対応できる医療ケアの内容や、協力医療機関の診療科目、協力内容をしっかり確認しておきましょう。また、緊急時にきちんと対応できる体制かどうかを知るうえでは、夜間の勤務体制もひとつの目安になります。

5.おしまいに

体内に十分な酸素を取り込むことができない方が、在宅酸素療法を行うと、息切れや集中力が改善され、頭痛なども軽減します。こうした改善は QOL の向上にもつながるので、豊かな生活のためにも、在宅酸素療法はとても大切です。

なお、入居される方の身体状況にあった環境・サービスが提供されているか、在宅酸素療法において経験豊富かどうかという以外にも、スタッフの日常的な対応や、他の入居者の方の表情が、とても穏やかに落ち着いているかどうかということも、老人ホーム選びの大きなポイントとなるでしょう。