家族信託・後見
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認知症で生じる問題への備えとして注目される家族信託とは
高齢化の進展で厚生労働省によると認知症患者が、2018年10月現在の462万人から2025年には700万人になると推計されています。これは65歳以上の高齢者の5人に1人が認知症患者であり、年齢が上がればさらにその割合は高まります。そのため高齢者を抱える家族にとっては認知症を発症するリスクを考慮する必要があります。家族が認知症になる大きな問題の1つは毎日の介護が大変になることですが、このことは容易に想像できます。もう1つは、認知症になった高齢者が所有する預貯金や不動産などの資産が凍結されて管理・運用・処分を合理的に、また自由に行えなくなる問題です。この問題は、まだ多くの人に理解されているとは言えません。
介護は家族による介護が困難になれば、そのときに介護サービスの利用や施設への入所などで負担を大幅に軽減できます。しかし、資産の凍結による管理・運用・処分が自由にできなくなる問題は、家族がこの問題に気がついたときに対処しようとしても困難さが伴います。この問題への対策は認知症になる前に家族信託をすることで解決できることから、家族信託について分かりやすく解説します。
家族信託とは
1.家族信託のしくみ
家族信託とは、高齢や認知症で判断能力が衰えて資産の管理が十分にできなくなることを防止するために家族が代わって高齢者のために財産の管理を行う手法のことです。具体的には、以下の図のように資産を持つ高齢者(本人)が、所有資産の運用・管理・処分を信頼できる子供に委託して、そこから得られる収入・利益を高齢者本人が受け取って老後や介護資金に使えるようにするためのしくみのことです。預ける資産は信託財産と呼ばれます。

2. 家族信託のメリットとデメリット・注意点
メリット

- 判断能力が衰えた高齢者の資産を守れる
- 近年、高齢者や認知症患者などに対する悪質な詐欺が多く起きていますが、このようなリスクから資産を守れます。
- 高齢者の資産の管理・運用・処分ができる
- 判断力の衰えや認知症で資産の管理が満足にできなくなったとき、家族が資産の管理・運用・処分を容易に行えます。子供が親のために親の資産を必要に応じて管理・運用・処分することは自由にできると思われがちですが、例えば、認知症で判断能力のなくなった親の預貯金の解約や不動産の売却に伴う契約などは子供であってもできません。しかし、家族信託を利用していれば子供が親の資産の管理、処分、契約ができます。
- 他の制度(成年後見制度)より自由で柔軟な資産管理ができる
- 家族信託の制度以外でも成年後見制度を利用することで同じようなことができますが、家族信託のほうが裁判所への報告義務、判断を仰ぐ必要がない、資産の積極的な運用や相続対策がしやすいなどの自由度・柔軟度の高い資産管理ができます。
- 相続時の資産継承や資産の管理・処分が容易にできる
- 資産の所有者が亡くなった後、例えば遺産を受け取る配偶者が認知症であったとき、家族信託のしくみで配偶者の資産管理を継続できます。さらに2次相続以降の資産の承継先まで資産の所有者が指定できます。
- 破産した場合でも資産を差し押さえられない
- 事業や投資の失敗で破産すれば破産者の資産は差し押さえの対象となりますが、信託財産は対象となりません。逆に、受託者である子供が破産したとき信託財産は、子供が管理する資産のために差し押さえの対象になると思えますが対象ではありません。そのため万が一、破産しても信託財産は高齢者の老後や介護資金として利用できます。
- 相続時に共有不動産の塩漬けリスクの回避ができる
- 相続した不動産が、複数の相続人の共有名義だと、その不動産を処分するには全員の同意が必要です。この同意ができないと不動産は処分ができなくて何もできない塩漬け状態になる可能性があります。家族信託であれば、受託者の権限で不動産の管理や処分ができるため、塩漬けのリスクを回避できます。
デメリット・注意点

- 親と子供相互の信頼がないと利用できない
- 信頼できる家族がいなければ、親の方で家族信託をしたいと思っても実質的に利用できません。また、逆に子供が親のことを心配して家族信託を持ちかけても親が同意しなければ利用できません。なお、前者の場合には信託監督人を置いて受託者が適正に資産を管理・運用・処分しているかを監督する方法を利用することで一定の対処ができます。また、信頼できる子供が多いと逆に誰がなるかでトラブルになったり、受託者の資産管理の方法に親族からクレームが出てトラブルになったりする可能性があります。
- 受託者は税負担が発生し、税務申告も面倒になる
- 子供(受託者、受益者)は財産を取得したわけではないのに財産を取得したとみなされて課税されます。また、受託者は信託された資産の資産から不動産収入が年間一定額をこえると税務署に信託計算書と信託計算書合計表を提出しなければならないなど税務上の処理が面倒になります。
- 実務上、すべての資産を信託財産にできない
- 法律上は原則として価値のある資産をすべて信託財産にできます。しかし、農地や上場株式などは手続きが必要であったり、面倒であったりするなどで実務上は信託財産にできない場合があります。
- その他の注意点
- その他、以下の点に注意して利用する必要があります。
- 遺留分侵害額請求の対象となる可能性がある
- 成年後見制度や遺言でできることがすべてはできない
- 税務対策にはならない
- 損益通算ができなくなるリスクがある
- 始めるときに手間と費用がかかる
3.家族信託のしくみで最低限知っておきたい法律
家族信託は、法律的には「委託者」が「受託者」と契約をして「受益者」のために資産を管理・運用・処分を行います。委託者とは資産の所有者で資産管理を委託する人。受託者とは委託者から資産の管理・運用・処分の委託を受ける人。受益者とは資産の管理・運用・処分で得られた収入・利益を得る人のことです。受託者は信託契約で定められた範囲内で、資産が不動産であれば名義変更、資産が預貯金であれば受託者の信託専用口座に入金して資産の管理・運用・処分を行います。
委託者と受託者の契約は「信託契約」といい、受益者には収入・利益を得る権利が生まれます。その権利は受益権と呼ばれます。信託できる資産は、原則として資産価値があれば法律上はすべて可能です。しかし、現実問題として信託財産にできるのは不動産、預貯金(債権を含む)、非上場株式に限定されます。
4.最低限知っておきたい税金
税務処理として以下の点についての理解が必要です。
- 委託者と受益者を同一にすれば贈与税は課税されない。ただし、登記をすると登録免許税は課税される
- 資産を委託しても、その評価に変化は生じない
- 相続税の課税に変化は生じない
- 損益通算ができない
家族信託が注目される理由
家族信託が注目される大きな理由は以下の2点です。
1.認知症高齢者の増加

将来、多くの資産を持つ高齢者の約5人に1人が認知症になって資産の管理ができなくなったとき、子供が資産を管理しようと思っても凍結されて自由に処分できなくなるリスクが高まります。
2.成年後見制度の問題点

認知症などで判断能力が不十分な高齢者に対して財産管理や身上監護をする制度として成年後見制度がありますが、多くの問題があって利用率も高齢者患者の約4%にとどまっています。
家族信託の利用例
家族信託は、資産の相続や資産の管理・運用・処分に対して従来の制度ではうまく対策できないことに対して利用できます。以下に活用例の一部を紹介します。
1.自宅療養から施設療養になったときの資金対策

現在、親は認知症の心配もなく自宅で療養できていますが、認知症を発症して施設へ入所して療養しなければならなくなったとき親の資産を処分して資金を作る必要があります。しかし、認知症になってからでは資産をスムーズに売却できなくなるための対策。
2.増加する詐欺への対策

高齢の両親は今の所、自立した生活が問題なくできていますが、子供と遠く離れて生活しており判断能力が衰えていくことを考慮すると資産を安全に管理できなくなる可能性に対する対策
3.遺言でできない資産継承や相続のトラブル対策

遺言ではできない相続対策が必要になることがあります。また、相続に関するトラブルも多く起きており、家族信託をその対策として活用。
まとめ
家族信託とは何か、注目を集めている理由、および利用例について紹介しました。家族信託を活用することでスムーズに合理的に資産を管理できて、高齢者の老後の生活を守れます。早めに家族信託について検討してみることをおすすめします。
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